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サンホラ祭。続くかなぁ?

涙が、ただただ果てなく流れ落ちた。
体中が震え、手に持ったそれもブルブルと震え続けている。
目の前にたたずむ化け物は、先ほどまで暴れまわっていたのが信じられないほどしんと静まり、ぴくりとも動かない。
静謐な深い海の底のような瞳。

そして、彼女は矢を放った。



恋人を射ち堕とした日


出会いは、まるで物語のように運命的だった。

「い、いやぁぁぁああああああ!!!!!!」

満月が煌々と輝く夜、彼女は古より生きると言われる魔物に襲われた。
すでに同じ馬車に乗っていた友人も、御者も馬も、ひと目で命はないとわかった。

「や、やあ・・・っっっ!!!」

魔物が彼女に近づく。
彼女の何倍も大きい図体を持つ魔物は、たった一歩で彼女のすぐ側まで近づいた。
触れただけで切れそうなするどい爪が振りあがり、月光に輝く。

もう、終わりだ・・・!!!

命の終焉を覚悟したその時、寸前で彼女と魔物の間に「誰か」が入ってきた。

「大丈夫かっ!?」

彼は剣を翻し、魔物と闘った。
苦戦を強いられたようだったが、彼はついに魔物を葬った。

「大丈夫か!? 怪我、ないか!?」
「あ、あなたこそ・・・、腕、腕から血が・・・」
「君はっ・・・!?」
「だ、大丈夫よ。怪我もないわ。あなたが助けてくれたから・・・」

ようやっと体の緊張が解け、感覚が戻ってくる。
泣くように微笑むと、彼は「よかった」と彼女を抱き寄せた。

二人が恋に落ちたのは、自然の流れだったのかもしれない。



「一目惚れだったんだ。だから必死で助けた」

不純でごめん。
彼の傷が癒え、彼女の心の傷が癒えた頃、彼はそう笑って言った。

「・・・それなら、私も不謹慎だわ。だって私、あなたが好き・・・」

彼女は彼にぎゅっと抱きついた。
幸せに涙がこぼれた。

「・・・・・・最高の気分だ」

彼は嬉しさに顔をゆるめて、そう囁いた。
全てが満たされた心地だった。
彼女はこのとき、幸せを信じて疑わなかった。



彼女たちに不穏な影が射したのは、恋人になってまもなくの頃だった。
彼が体の不調を訴え出した頃、彼女は街角で老いた魔女に呼び止められた。

「お前・・・、お前だよ」
「・・・わ、私?」
「ああ・・・、お前の男、腕に傷に負ったじゃろう・・・」

ぞっとした。
それは事実だ。彼女と出会ったあの日のこと。

「・・・昔の話よ」
「負ったのじゃな? 古の魔物であろう・・・、おお、なんと不吉な・・・」
「・・・・・・何が言いたいの!」
「知らぬのか、小娘。古の伝説を」

その魔物に傷を負わされた者は
呪いが全身を駈け廻り
やがては同じ魔物に成り果てるだろう…

「・・・嘘。デタラメを言わないで!」
「真実じゃよ。実際、その兆しは見え始めているはずじゃ」
「っっっ!!! 知らないわっ、そんなの、見えてない!」
「小娘。どうわめいても、あがいても、事実は変わらぬぞ・・・」

嘘だ! 嘘だ!
彼女は恋人のもとへ逃げ帰った。
彼は彼女の話を聞き、「そんなことあるわけない」と笑い飛ばした。

「でも、もし本当だったら、せめて君の手にかかって死にたいな」
「ふ、不吉なこと言わないでよ!」
「ごめんごめん、冗談だよ・・・」

彼は彼女を抱きしめ、「心配するな」と頭をなでた。
しかし、彼の不調は満月が近づくにつれ顕著になっていった。

そして、あの夜と同じ、満月の夜。

彼は彼女の目の前で変貌を遂げた。

見る見るうちに彼の全身を覆う灰褐色の剛毛。
爪は鎌のように長く、鋭く。歯はそのひと噛みで人間の体に風穴が空くことを確信させた。
体格も人のそれを大きく超えた彼は、屋根を突き破り、野太い咆哮とともに外に飛び出た。

あらゆるとこであがる悲鳴、絶叫。
逃げ惑う人々、飛び散る血。

わ、私達が何をしたというの。
こんな、こんな仕打ちがあっていいの。

気付かぬうちに涙が流れた。
魔物と成り果てた彼は、殺戮を繰り返している。

彼はいずれ殺されるだろう。
いつまでも殺され続けるほど、人は従順じゃない。
強さがあれば、もしくは頭を使えば、彼を殺すことはできる。
あの夜、彼がしたように。

「いくのかえ?」

いつぞやの魔女が、再び彼女の側にいた。
彼女は魔女の差し出す銀の弓矢を手に取った。

『せめて君の手にかかって死にたいな』

ええ、せめて。せめて。
誰かに殺されるくらいなら。

殺戮を繰り返す彼の前に立つ。
彼は急に動きを止めた。静まった瞳が、彼女を見つめる。

ああ、なんでこんなことに。
全ては出会ったあの日に、始まっていたなんて。

愛する人を失った世界には
一体どんな色の花が咲くだろう?

彼女は銀色に輝く矢を放った。
何度も、何度も。
彼が死に絶えるまで。
何度も、何度も。
彼女は泣きながら矢を放った。

いとしいひと。
あいしたひと。あいしてくれたひと。

ごめんなさい。
私を助けたばかりに、あなたは魔物としてたくさんの同類の命を屠り、魔物として生を終えた。

でも、どうか。
最期まであなたを愛することを許してください。

彼女は彼の死を看取ると、最後の矢を握りしめ、

そのまま自らの胸に突き刺した。



無慈悲で残酷なこの世界には、今日も鮮やかな色の花が咲き誇る。
鮮やかに、あざやかに。

思いつきメモ

「秋元先生、ごきげんよう」
「ごきげんよう」

生徒達の礼儀正しい挨拶に心が震えた。
ああ、私の生徒達はなんて素晴らしいの!
秋元菜月は良家の子息ばかりが集うこの学院の教師であり、そのことに深く誇りを持っていた。
どの子も礼儀正しく丁寧で、問題児なんて言葉はどこにもない。
そんな子供達を我が手で育てる喜びといったら!

この学院に所属されてから何度目かわからない悦に浸っていると、それを切り裂くような轟音と叫び声が聞こえた。

「きゃああああ!!!」
「悪っい!」

この声は・・・・・・!!!
振り返ることすら嫌で固まっていると、すごい勢いで背中を叩かれた。
勢いに負けて、軽く転んでしまう。

「秋元センセ、おっはよー!」
「・・・こ、こらぁぁぁあああああ!!! 篠塚!!!」

叫び声むなしく、ヤツは超高速で自転車を走らせ、砂埃を巻き上げ(道は全て整備されたコンクリート、掃除も完璧なのに!)、視界から消え去っていく。

「あ、あンの野郎・・・・・・!!!」

いた。
問題児が。
家は申し分ない、この学院の生徒の中でも1,2を争う名家。
なのに、この通り、行動・言動に問題のありすぎる生徒が!

篠塚英史!
私が目の敵にするヤツ!



「う、うそぉ・・・!」
「嘘じゃないっての。センセの見える通りのイイコなんて、この学院には数えるほどしかないぜ? みんな裏で動く技を知ってる」
「・・・・・・そうと知ったら放っておけないわ」

英史は少なからず驚いた。

「なんで。アンタ以外の先生はみんな知ってる。知ってて、放っておいてる」
「そんな! 私は教師なのよ!? そんなことできるわけないでしょう!?」
「学院の生徒は良家の子息ばかりだ。つまり、バックにとんでもなく大きな虎がいる。今の生徒だって同じだ。庶民出のセンセを社会的に消すことくらい、なんでもない」
「・・・っ!!! ・・・・・・そんなことくらい、知ってるわよ! それでも、教師が道を外している生徒を放っておくなんて、していいわけないでしょ!?」

菜月の真摯な目が、まっすぐ貫いた。
・・・全く。敵わない。

そうだ。このセンセイははそういう人だった。
どんな派手に「学院にそぐわない行動」を起こしても放っておかれた俺を、いつも叱り飛ばした。

「・・・わかったよ。敵わない」
「え?」
「協力してやる」



<初空>
こんな熱血先生生徒モノを思いつきました。
でも書くものが溜まっているので、もし書くとしてもいつになるかわからないくらい先の話なんだろうなぁ・・・。

思いつきメモ

「あ、頭悪くないもん!」
「うっわ、まさにそれが頭悪そうな台詞」

ミリとケイは16年間何度も繰り返したような会話を、今日も繰り広げていた。

「天然ボケの考えなしなくせして」
「ち、違うよ! 考えてる!」
「『ミリちゃんは素直だねぇ』って今まで何回言われた?」
「? 素直はいいことでしょ?」
「ばーか」

そしてケイはミリにとって爆弾級の発言をした。

「素直ってのは、そのまんまってことだろ。考える必要がないんだ」
「えぇ!!!」

ミリはよく考えた。
・・・なるほど、言われてみればそうかもしれない。

「・・・じゃ、じゃあケイちゃんがよく言われるような『腹黒』はよく考えてるの?」
「当たり前だろ。裏と表を使い分けるんだから、そりゃあ頭を使う」

ミリはよく考えた。
・・・確かに。そもそもケイちゃんは頭がいい。だからだろうか。

「・・・じゃあわかった」
「あ?」

そしてミリは決心した。

「あたし、腹黒になるっ!!!」

ケイは思った。
ああ、やっぱりコイツはバカだ。

だが裏と表を見事に使い分けるケイは、笑顔で言った。

「よく言った。がんばれ」
「うん!」
「場合によっては応援してもいい」
「うん! ありがとう、ケイちゃん!」

こうしてミリの無謀な挑戦が始まった。





忙しくなるたび小説が書きたくて書きたくてしょうがなくなります。
萌えが足りてないせいだと思います。

あー。
今の貧乏から抜け出したら、石田さんと杉山さんの着ボイスが欲しいと真剣に思う今日この頃。

過去Memoより

ああ、全く。

なんでったって私の彼氏は、こんっなナルシストなわけ?

「ねぇ、聞いてる?」
「・・・え? ごめん、なんだったかな」

こいつは今「ごめん」と言っておきながら、申し訳ない気持ちは感じていない。断言する。
「ごめん」とか言う余裕あるスマートな自分に酔いしれているだけだ。確実に。

「・・・・・・もう、我慢ならない・・・」

付き合い始めてから約3ヶ月。魔の3の倍数とはよく言ったものだ。

「スズ?」

スズ?、じゃないわよ。
我慢ならないってのよ。
アンタの自分ばっか見てて私を見てくれないところがもう我慢ならないってのよこの自己陶酔症男!!!

「アンタ、本当に私のことが好きなわけぇ!?」
「な、何をいきなり。もちろん好きだよ」
「そうね! 自分の100分の1以下ぐらいにはね!」
「え、なんだそれ」
「事実でしょお!」
「自分と他人は比べられないだろう」
「アンタはそうかもね! 他人とは比べ物にならないぐらい自分大好きだもんね! でも私は違うの! アンタが一番好きなの! やっと想いが通じ合ったと思ったのにこんな・・・、一方通行なのはイヤ!!!」
「・・・・・・え、えちょ、ちょっと待て!!!!!!」
「待たないわよ!」

「待て馬鹿! 鈴木浩太!」

「その名で呼ばないでぇ!」
「浸ってんじゃねぇ! この妄想表像男!!!」



■自己陶酔症男と妄想表像男の話■

突発的に思いついた話

「すみません、お願いがあるのですが」

突然見知らぬ男にそう話しかけられたとき、久実は「またか」と思った。
例えば、久実は今までポケットティッシュを自腹で買ったことはない。
駅周辺を歩いただけで毎回5つはもらう。
宗教関係者やなんらかの思想をもってそういった団体に所属している人に話しかけられるのも、しょっちゅうだ。
久実は人が良さそう、と言えば聞こえがいいが、気弱そうに見えるらしい。

だから久実はこのときも、さあ丁重にお断りしようと心構えをした。

「はい?」

一応そう返す。
久実は道を尋ねられることもしょっちゅうだったので。

が、返ってきた言葉は久実の想像を遥かに絶するものだった。

「愛していいですか」

・・・・・・どう返したものだろう。
この男の人は頭が弱い人に違いない。
同情は覚えるが、ここで「はい、どーぞ」と答えるわけにもいかないだろう、多分。

「・・・何分間ですか?」

久実はよく「3分だけでいいのであなたの幸せを祈らせてください」とも言われる。
なので、それの類似系かとも思った。

「一生に決まってます。一生、あなた一人だけを愛してもいいですか」

・・・・・・・・・・・・・・・・逃げてもいいだろうか。
この目の前にたたずむ真剣な表情の・・・、お、よく見れば顔はいいな。
じゃあますます殴ってやりたい。そして心置きなく気絶してほしい。

「あー・・・、えーと・・・」
「もしかして、先約がお有りですか」
「いやー・・・」

そういうわけじゃない。
むしろそういう問題でもないと思う。

「じゃあ何がいけませんか。僕が嫌いですか」

嫌いも何も、あんたのことは何も知らない。
ただ初対面の相手にいきなりプロポーズする頭のおかしな人、ってことぐらいしか情報がない。
・・・おお、よく考えたら断るにはそれだけで十分じゃないか?

「そうですね。一生の相手としては、嫌ですね」

もういっそ面倒になったので、そう言ってみた。
ここはきっぱり言ってやった方が相手も目を覚ますかもしれない。

「そうですか。困りましたね」

さっきから困り続けているのは私の方だ。
絶対にそうだ。それは譲れない。

「僕にはあなたしかいないんですけど」

・・・よく見ろ!
人類の約半分は女だ。
同年代だけ選んでもあまりあるほどに相手はいるじゃないか。

「とにかく、私はこれで」

さっさとこの場を離れたかった。
そして3歩歩いて忘れたい。

「ええ。またお会いしましょう」

末恐ろしいことを言う。
しかし相手は初対面。
私の連絡先などひとつとして知らないはずだから、大丈夫だろう。
相手は頭がおかしいのだから、いちいち言うことを真に受けてはいけない。

私はそう思ったので、適当に合わせて返事をした。

「ええ、また」

まさかその「また」が3時間後になるとは思いもしなかった。
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