「おやー、こんにちは」
ふいに背後からかかった挨拶に、あたしはげぇ、と思った。
・・・・・・結論。何も聞こえなかった。
「無視しないでくださいよー。今気付いたでしょう、確実に」
「・・・やだなー、幻聴聞こえる。医者行かなきゃ」
「リロルさん! そりゃないですよー」
しつこく追いかけてくるので、あたしはしょうがなく振り向いた。
目立つのはキライだ。
「・・・・・・ネズ牧師・・・」
「寂しいから無視しないでください。ただでさえ日曜の礼拝に来てくれないからなかなか会えないのに」
「礼拝なんかするより、実際働いて稼いだ金があたしを助けてくれるって知ってるからね」
冷たく言うと、牧師は悲しそうに眉を下げて笑った。
「・・・だから言ってるじゃない。あたしは神なんか信じてないって」
「えぇ。だから私も信じてほしいなんて、一度も言ってませんよ」
誠実な目があたしを映し、あたしはつい目をそらした。
・・・その通りだ。
牧師はあたしに一度だって信仰を押し付けなかった。
「ハレルヤ(主を讃えよ)」の一言さえ言わない。
「・・・じゃあ、何で」
「生きていく上で、人と人とのつながりはとても大切だからです」
・・・牧師はいつも全ては言わない。
考えさせてくれる。
「・・・教会に行けばいろんな人に会う。逆に行かなきゃ信心深い人に白い目で見られるってこと?」
「その通りですー。リロルさんはやっぱり頭がいい」
「・・・・・・でも、信じてない人が行ったら、信心深い人と悪い関係気付いちゃうかもよ?」
「リロルさんは頭がいいから大丈夫です。それでも荷が重いなら、」
牧師はあたしを見て、にっこりと笑った。
「私に会いに来て下さい。また次会いたくなるようにしてみせますから」
あたしはその笑顔が、今までの笑顔と違って妙に・・・、黒いものを感じさせてぎょっとする。
・・・うわぁ。そうだろうとは思ってたけど、ただのイイヒトじゃないわ、こいつ。
「・・・あはは、じゃ、気が向いたらね」
むしろ絶対行かないと誓いながら(誰にかはわからない)、そそくさと立ち去ろうとすると、牧師の落ち着いた声が呼び止めた。
「あ、リロルさん、知ってます?」
「・・・何を」
他の信者には見せない表情だろう、これ。
「牧師って、結婚できるんですよ」
あたしは即座に決心した。
今後一切この男に近づくもんか!
207ベータ 挑戦50題「24 ハレルヤ」