207ベータ 挑戦50題「過剰防衛」
・・・といえばこいつ等でしょう。
『諦めの悪いヤツ』
「あ、槙野さんー。そのお茶一口くださいー」
家の近くを歩いていると、伊織がぐだぐだしたしゃべりで話しかけてきた。
・・・そうだコイツは梅雨が苦手だった。
低気圧の影響をてきめんに受ける体質で、頭痛がひどくなる。
「あ、ああ。大丈夫か?」
「・・・あんまり?」
私がちょうど持っていたお茶を差し出しながら尋ねると、へにゃっとした顔で言った。
・・・可哀想になぁ・・・。
全部・・・、とはいわないから半分くらい引き受けてやれればいいのに。
うっかりそんなことを考えて動揺し、ついで自分が飲んだばかりのペットボトルに口をつける伊織をみて動揺した。
・・・今更! 今更何に動揺しているんだ!
いったん気付いてしまうと、お茶を嚥下する咽やペットボトルをつかむ骨ばった手が目につく。
・・・・・・なんだって体調がちょっと悪い人間ってのは、色っぽく見えるんだ・・・!
必死に動揺を前に出さないようにしていたが、やはり伊織の前では無駄で。
「・・・・・・今更何恥ずかしがってるんですか? たかが間接キスくらいで」
直前までへろへろだったくせに、こういうときばかりにやにやと問いかける。
「なんなら口移しだっていいくらいなのに」
「死ねぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!!!!」
ついに耐え切れなくなって思いっきりキックをかました。
避けられることは予想済みだったのでついでストレート・・・、あれ?
「うわっ・・・」
「・・・何やってんだお前」
いつもだったら余裕でかわして更に次の攻撃にも万全に備えてやがるのに、なんとか避けたはいいものの、しりもちをついている。
「本当に体調悪いんだな・・・」
「・・・言っときますけど、これくらいで普通か、これでも普通以上ですよ」
立ち上がるのに手を貸すと、悔しげに言う。
「まったく。槙野さんに付き合えるのなんか、僕くらいですね」
「・・・うう、うるさい」
お前だって、体調が悪いくらいがかわいげがあってちょうどいい。
・・・どうせいつも負けてばっかりなんだから。